乏色素性悪性黒色腫について

● 黒色腫とは?

黒色腫(メラノーマ)は、皮膚や粘膜に存在する**メラノサイト(色素産生細胞)**に由来する腫瘍です。一般的な黒色腫はメラニン色素を多く含むため黒色~茶褐色を呈しますが、乏色素性のタイプではメラニン量が非常に少なく、淡色調~無色に見えることが多いため、臨床的に他の腫瘍や炎症性病変と識別しにくいのが特徴です。

● 乏色素性メラノーマの診断について

乏色素性黒色腫は外観上の色調では診断が困難であるため、**細胞診や生検(病理組織学的検査)**が必須です。さらに、通常のHE染色ではメラノサイトであることが確認しづらいため、**免疫染色(例:Melan-A, PNL2, S100 など)**による補助診断が推奨されます。

● 悪性度と転移リスク

悪性黒色腫は、局所での浸潤性増殖に加え、肺や局所リンパ節への転移リスクが高い腫瘍です。特に口腔内や趾部(足指)に発生したものは予後不良とされる傾向があります。乏色素(無色素)性悪性黒色腫は通常の黒い悪性黒色腫に比べて悪性度が高いことが多く、より早期の対応が必要になります。

症例紹介

症例は12歳のミニチュア・シュナウザーです。フードが食べづらく、食欲も落ちていて、原因と思われている歯石の除去がかかりつけで出来ないとのことで来院されました。

歯石除去のために口腔内の検査をすると喉の奥に大型の腫瘍が認められました。

この大型の腫瘍が喉を押しつぶしていてフードが食べられない状態になっていたため、摘出手術を行いました。

腫瘍を摘出した状態と縫合した状態です。腫瘍は歯肉と軟口蓋に広がっていて、大部分を摘出することになりました。軟口蓋は残っている左側から形成して作成しました。

1週間後には傷は塞がっていました。

診断は乏色素性悪性黒色腫でした。悪性度の高い腫瘍で通常は転移や再発が起きることが多く、予後はよくありません。

今回の症例では副作用の少ない、抗がん作用のある薬を使用して再発を予防しております。今のところは再発なく、フードも食べられるようになり、元気に過ごしております。

口臭がする、フードが食べづらいなどなにか兆候がありましたら早めに来院することをおすすめいたします。