歯根膿瘍について
歯根膿瘍(しこんのうよう)は、歯の根の部分に膿がたまることで発生する感染症です。通常、歯の根の部分に細菌が入り込むことで感染が起こり、膿がたまって腫れや痛みを引き起こします。歯根膿瘍は犬や猫でもよく見られる病気で、放置すると感染が広がり、健康に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、早期の発見と治療が非常に重要です。
原因
歯根膿瘍は、通常、以下のような原因で発生します:
- 歯の歯周病:歯周病が進行すると、歯の根の部分に細菌が侵入することがあります。歯周病がひどくなると、歯肉が歯から離れ、細菌が歯根に到達して感染を引き起こします。
- 外傷:事故やけがで歯が折れたり、ひびが入ったりすると、そこから細菌が入り込むことがあります。
- 不適切な歯のケア:歯の衛生状態が悪いと、歯石やプラークが溜まり、細菌が繁殖しやすくなります。
症状
歯根膿瘍の主な症状は以下の通りです:
- 腫れや膿の排出:感染が進行すると、歯の周りの歯肉が腫れたり、膿が出ることがあります。膿が口から漏れることもあります。
- 痛みや不快感:食事を取るのを避ける、物を噛むのを嫌がる、口を触られると痛がるなど、歯が痛いことがわかります。
- よだれや口臭:膿が口の中に溜まるため、口臭がひどくなることがあります。また、よだれが多くなることもあります。
- 食欲不振:痛みや不快感から、食欲がなくなることもあります。
- 顔や顎の腫れ:歯根膿瘍が進行すると、顔や顎の周りに腫れが見られることがあります。これは感染が広がっているサインです。
診断
歯根膿瘍は、獣医師が口腔内の検査を行い、歯や歯肉の状態を確認することで診断されます。診断には、X線(レントゲン)検査が使われることが一般的です。X線で歯根周辺の骨の状態や膿の溜まり具合を確認することができます。
治療方法
歯根膿瘍の治療は、感染を取り除くことが基本です。治療方法は次のようになります:
- 抗生物質:感染が広がるのを防ぐために、抗生物質を投与することがあります。これにより、膿の量が減少し、炎症が抑えられます。
- 歯の抜歯:膿が歯根まで深刻に浸透している場合、感染源となっている歯を抜歯することが最も効果的です。抜歯により、感染が完全に取り除かれます。
- 膿の排出:膿が溜まっている場合は、膿を排出するための切開を行うことがあります。その後、抗生物質で感染を治療します。
- 歯の治療:場合によっては、歯の根管治療(根管内の感染を取り除く処置)を行うこともありますが、抜歯が最も一般的な治療法です。
予後
治療が適切に行われれば、歯根膿瘍は治ることが多いです。ただし、感染が広がる前に発見して早期に治療を開始することが重要です。歯を抜く必要がある場合でも、その後の回復は良好で、痛みがなくなり、食欲が戻ることが期待できます。
予防
歯根膿瘍を予防するためには、犬や猫の口腔ケアが重要です:
- 定期的な歯磨き:歯磨きを定期的に行い、歯垢や歯石を取り除くことが予防に役立ちます。専用のペット用歯ブラシと歯磨き粉を使い、歯の健康を守りましょう。
- 歯石除去:獣医師による定期的な歯石除去を行うことも大切です。
- 定期的な健康チェック:定期的に獣医師の診察を受け、歯や口腔内の状態をチェックしてもらうことが予防につながります。
症例紹介

画像は歯根膿瘍の犬です。他院にて過去に歯根膿瘍の治療をしたが治らないとの主訴で来院されました。

手術中にレントゲンの検査を行い原因になっている歯の特定をします。
手術中抜歯後に抜いた歯が原因だったかの最終確認をします。歯根膿瘍は歯根から皮膚に向かって瘻管(膿を排出するための管)が形成されているため歯肉から皮膚まで金属の管を通しています。
歯根膿瘍は早期に発見して治療すれば、犬や猫が痛みから解放され、元気を取り戻すことができます。もしお口の中や顔の皮膚に異常が見られた場合や、食欲不振、口臭が気になる場合は、早めにご相談ください。