犬の慢性下痢について

犬の慢性下痢は、少なくとも2週間以上続く下痢の状態を指し、様々な原因が考えられます。慢性下痢は犬の健康に深刻な影響を与える可能性があり、早期に適切な診断と治療を行うことが重要です。ここでは、犬の慢性下痢についての原因、症状、診断方法、治療法について説明します。

1. 慢性下痢の原因

犬の慢性下痢には多くの原因が考えられます。いくつかの主な原因を挙げます。

1.1 消化器疾患

  • 感染症:細菌、ウイルス、寄生虫などが腸内で感染を引き起こし、下痢を引き起こすことがあります。例えば、寄生虫(コクシジウムジアルジアなど)が原因となることがあります。
  • 食事の問題:食物アレルギーや不耐症、質の悪いフード、急激な食事の変更が原因で腸内が敏感になり、慢性的な下痢を引き起こすことがあります。
  • 消化不良:膵臓から分泌される消化酵素の不足(膵外分泌不全)や腸内細菌叢の乱れが原因で食物が十分に消化されず、下痢が発生することがあります。
  • 炎症性腸疾患(IBD):免疫系が過剰に反応し、腸内の炎症を引き起こす疾患で、慢性的な下痢が続くことがあります。IBDはしばしば食欲不振や体重減少を伴います。

1.2 腫瘍や腫瘍性疾患

腸内の腫瘍(良性または悪性)が下痢を引き起こすことがあります。腫瘍によって腸が圧迫されることで、正常な腸の機能が損なわれ、慢性下痢を引き起こすことがあります。

1.3 内分泌疾患

  • 甲状腺機能低下症や**副腎皮質機能低下症(アジソン病)**などのホルモンの不調が消化器系に影響を与え、慢性下痢を引き起こすことがあります。

1.4 肝臓や腎臓の疾患

肝臓や腎臓に問題がある場合、消化器系に影響を及ぼし、下痢の症状が現れることがあります。特に肝臓疾患は腸内の消化機能を低下させ、下痢を引き起こすことがあります。

1.5 ストレスや環境要因

ストレスや不安、生活環境の変化(引っ越し、新しいペットの導入など)も犬の消化器系に影響を与えることがあり、これが慢性下痢の原因となることもあります。

慢性下痢の症状

慢性下痢には、以下のような症状が見られることがあります:

  • 水っぽい便:便が水分を多く含んでいることが特徴です。
  • 頻繁な排便:排便の回数が増えたり、急にトイレに行きたくなったりすることがあります。
  • 血便や粘液便:腸内の炎症が進行すると、便に血液や粘液が混じることがあります。
  • 体重減少:慢性下痢による栄養吸収の低下や食欲不振で、体重が減少することがあります。
  • 元気がない、食欲不振:犬が元気をなくし、食欲も低下することがあります。

診断方法

慢性下痢の原因を特定するためには、いくつかの診断方法が必要です。獣医師は以下の手順で診断を進めます。

3.1 問診と身体検査

飼い主様からの詳細な症状の情報を基に、犬の病歴や生活環境、食事内容を確認します。その後、犬の体調や腹部の触診を行います。

3.2 糞便検査

寄生虫感染や細菌感染が疑われる場合、便を検査して寄生虫や細菌の有無を確認します。これは非常に基本的かつ重要な検査です。

3.3 血液検査

内分泌疾患や感染症、肝臓・腎臓の機能をチェックするために血液検査を行います。また、栄養状態や炎症の有無も評価できます。

3.4 画像検査(X線、超音波)

消化管の構造や腫瘍、異物などを調べるために、X線や超音波検査を行うことがあります。

3.5 内視鏡検査

消化管内の状態を直接観察するために内視鏡検査を行うことがあります。この方法は、炎症性腸疾患(IBD)や腫瘍、異物などを発見するのに有効です。

3.6 生検

内視鏡検査などで異常が見つかった場合、組織を採取して病理検査を行うことがあります。これにより、炎症や腫瘍の種類を確定することができます。

治療法

治療方法は、慢性下痢の原因に応じて異なります。

4.1 食事の見直し

食物アレルギーや不耐症が原因の場合、適切な療法食を用いることが有効です。例えば、低アレルゲンのフードや消化に優れたフードに切り替えることが勧められます。

4.2 薬物療法

  • 抗生物質:細菌感染が原因の場合に使用されます。
  • 駆虫薬:寄生虫が原因の場合、駆虫薬を使用します。
  • 消化器系を保護する薬物:腸内フローラを整え、消化器の炎症を抑える薬(プロバイオティクスや抗炎症薬など)が使用されることがあります。
  • ステロイドや免疫抑制薬:炎症性腸疾患(IBD)の場合、免疫抑制薬やステロイドが処方されることがあります。

4.3 外科手術

腫瘍や異物が原因で下痢が発生している場合、外科的に取り除くことが必要になることがあります。

まとめ

連続ではなく時々下痢をする場合も慢性下痢の可能性があります。もし思い当たる事がありましたらご相談ください。

内視鏡検査についてはこちらを御覧ください。