肥満細胞腫について

肥満細胞腫は犬と猫の皮膚でよくみられる腫瘍です。犬の皮膚腫瘍では発生頻度が最も高く、猫の皮膚腫瘍では2番目に多いとされています。犬と猫の肥満細胞腫では悪性度が大きく異なっていると言われており、猫は良性が多く、犬は悪性が多いと言われています。犬の肥満細胞腫はほとんど場合皮膚に発生し、他の臓器に発生することは稀です。見た目はさまざまで脂肪腫と言われていたものが実は肥満細胞腫ということも少なくありません。

検査

検査は針生検を行います。針を刺して腫瘍細胞を取り、染色をして顕微鏡で見ることで診断をします。肥満細胞には特徴的な顆粒が細胞質にあるため、この顆粒がある場合は肥満細胞腫の可能性が高いです。ちなみに肥満細胞とは、動物が肥満だから肥満細胞ができるわけではなく、顆粒によって細胞が太っているように見えることから肥満細胞という名前がついています。

治療

治療は外科手術が効果的です。ただし、犬の皮膚肥満細胞腫ではかなり広範囲を切除する必要があり、発生部位が悪いと完全切除が難しいこともあります。

画像は犬の尻尾にできた肥満細胞腫です。この腫瘍は肛門の上あたりまで腫瘍があるためマージン(腫瘍周囲の正常組織)の確保が難しく、完全切除はできないため、尻尾を残して手術を行い、術後に抗がん剤をすることで腫瘍をコントロールすることになりました。肥満細胞腫の抗がん剤には理論上は副作用のない抗がん剤である分子標的薬が存在するため、この抗がん剤が使えれば副作用はほとんど出さずに抗がん剤治療が可能になります。

摘出後の腫瘍です。大きさは約10センチくらいです。

摘出後の尻尾の状態です。かなり広範囲を切除する必要があったため、手術には局所ブロック麻酔を併用しており、術後の鎮痛もしているため痛みはそこまで見られず、術後当日から食欲は旺盛でした。

もし、ペットに何か「できもの」ができたら、大丈夫だろうとは思わず、検査をお勧めします。悪性腫瘍だとしても早期に治療をすることで完治を目指せることも多いです。早めに動物病院に相談することをお勧めいたします。