進行性脊髄軟化症について
● どんな病気か?
進行性脊髄軟化症は、脊髄(背骨の中にある神経の束)が壊死して、上や下に向かって急速に広がっていくという、極めて重い病気です。多くの場合、重度の椎間板ヘルニア(特に胸腰部)に続発して起こることがあります。
● どんな症状が出るか?
この病気では、発症から数時間〜数日のうちに、以下のような急激な進行が見られることがあります:
- 後ろ足の完全な麻痺(立てない、歩けない)
- 深部痛覚(強い刺激に反応する感覚)が消失
- 麻痺が前足の方へ上がってくる
- 尿や便が自分で出せなくなる
- 呼吸に使う筋肉に麻痺が及ぶと、最終的に呼吸困難を起こし亡くなってしまいます。
● なぜ起こるか?
正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、重度の脊髄損傷に伴って、神経組織が壊れていく過程で異常な酵素や炎症反応が連鎖的に起きることが関係していると考えられています。外傷や急激な圧迫、特に深部痛覚が失われるような重度のヘルニアの後に起こるリスクが高くなります。
● 治療は可能か?
治療は出来ず、発症するとほぼ100%助からないと言われていましたが、早期に脊髄の圧力を逃がす硬膜切開手術を行うと進行が止まることがあります。
症例紹介
症例は5歳のミニチュアダックスフンドです。かかりつけの病院から進行性脊髄軟化症の疑いがあるとのことで緊急手術を行いました。自力の排尿も出来ず、食欲もなく、進行している状態でした。

画像検査では12胸椎と13胸椎の間に脊髄への強い圧迫がありそうでした。画像診断医からもMRI画像から脊髄軟化症の可能性があるとの診断が来ました。
手術では画像上原因になっていそうなところにまずアプローチをします。神経の色が悪く軟化症の可能性が高いため前後の椎体にも広げていきます。後ろの硬膜に切開を入れ、軟化している脊髄が漏れ出てきました。神経がまだ生きていそうな椎体まで椎弓切除を広げていき神経を確認して終了です。

今回の症例は無事に退院することが出来ました。食欲も出てきており軟化症の進行は止められているようです。
当院では緊急手術の受け入れも可能ですので、ヘルニア疑いの場合には早めに連絡・来院ください。