直腸腫瘍について
直腸腫瘍とは、肛門に近い腸(直腸)の粘膜にできる「しこり」や「できもの」のことをいいます。
良性のもの(ポリープなど)の場合もありますが、悪性腫瘍(がん)のこともあります。
主な症状
直腸に腫瘍ができると、次のような症状がみられることがあります。
- 排便時にいきむ、便が出にくい
- 便の形が細くなる、血便が出る
- 肛門の周囲が腫れて見える
- 頻繁にトイレに行くが、少ししか便が出ない
- 食欲低下や体重減少
こうした症状は、便秘や肛門周囲の炎症などでも起こるため、診断のためには検査が必要です。
診断方法
直腸指診(肛門から指で触診する検査)や、レントゲン・超音波検査で腫瘍の大きさや位置を確認します。
確定診断には、腫瘍の一部を採取して顕微鏡で調べる「病理検査(生検)」を行います。
治療について
治療法は、腫瘍の種類や大きさ、進行の程度によって異なります。
- 良性腫瘍(ポリープなど):外科的に切除することで完治が期待できます。
- 悪性腫瘍(がん):外科手術でできるだけ腫瘍を取り除き、必要に応じて抗がん剤や放射線治療を行います。
高齢の猫ちゃんや進行が進んでいる場合は、痛みや排便の苦しさを和らげるための緩和ケアを中心に行うこともあります。
早期発見の大切さ
直腸腫瘍は、早期であれば外科的に治療できる可能性があります。
排便の様子や便の形に変化があった場合は、早めの受診をおすすめします。
症例紹介
症例は13歳の猫で脱腸しているとの主訴で来院しました。直腸検査をしたところ脱腸ではなく、直腸・結腸からの腫瘍が発生している状況でした。進行すると排便困難になる可能性が高かったため手術で摘出することになりました。


術前の消毒中の写真です。腫瘍が肛門を塞いでいる状態でした。腸の一部ごと腫瘍を摘出します。

腫瘍を腸の一部ごと摘出して縫合して終了です。病理診断は高悪性度未分化肉腫でした。腫瘍は取り切れている状態ですが、再発しないかどうか経過を見ていく必要があります。
肛門周囲の腫瘍が疑われる場合は早めにご来院ください。
