心膜腹膜横隔膜ヘルニアについて

心膜腹膜横隔膜ヘルニア(PPDH)についてのご説明】

心膜腹膜横隔膜ヘルニア(PPDH)は、横隔膜と心膜(心臓を包む膜)の間に先天的な欠損があり、腹部の臓器(肝臓や腸など)が胸腔内、特に心膜の中に入り込んでしまう状態です。

この疾患は主に**先天性(生まれつき)**のもので、まれに他の奇形や異常と併発することもあります。事故などによる後天的なヘルニアとは異なり、発育段階での構造異常によって生じます。


■ 症状について

PPDHの症状は、無症状で見つかることもあれば、臓器が圧迫されることでさまざまな症状が出ることもあります。

【主な症状】

  • 呼吸が浅い・速い・苦しそう
  • 運動を嫌がる・疲れやすい
  • 食欲不振や嘔吐
  • お腹の張り、元気消失

※無症状で健康診断や他の病気の検査中に偶然見つかるケースもあります。


■ 診断について

診断には以下の検査を行います:

  • X線検査(レントゲン):胸部に腹部臓器が写ることでヘルニアを確認します
  • 超音波検査:心膜内に肝臓などの臓器が入り込んでいるかを詳しく確認します
  • 必要に応じてCT検査を行うこともあります

■ 治療について

治療は基本的に**外科手術(ヘルニア整復術)**が推奨されます。
これは、心膜内に入り込んでしまった腹部臓器を元の位置に戻し、欠損部分を縫合して閉じる手術です。

無症状の場合、経過観察を選ぶこともありますが、臓器の圧迫や機能障害のリスクを考慮すると、早期の外科的対応が望ましいケースが多いです。

症例紹介

症例は先天的に横隔膜に穴が空いていて心膜腹膜横隔膜ヘルニアを発症している猫です。心臓の後ろに肝臓が入り込んでいるのがわかります。

この症例は開腹手術だけでは整復出来なかったので開胸も行い、心臓周囲に癒着している肝臓を剥がして腹腔に戻し、横隔膜の穴を埋めて手術終了になります。
症例は問題なく退院しております。

横隔膜ヘルニアが見つかって手術を悩んでいる場合は一度ご相談ください。