犬の股関節脱臼について

股関節は、骨盤のくぼみ(臼蓋)に大腿骨の先端(大腿骨頭)がはまり込むことで形成されています。この部分が強い衝撃や外力によってはずれてしまい、本来の位置からずれることを「脱臼」と呼びます。


■ 股関節脱臼の原因

  • 落下や交通事故などの外傷
  • 生まれつき関節がゆるい(先天的な関節形成不全
  • 激しい運動やジャンプによる過負荷

まれに、日常的な動作でも脱臼するケースがあります。


■ 主な症状

  • 後ろ足を地面につけずケンケンするような歩き方
  • 足をかばうように歩行を拒否
  • 関節を触ると痛がる
  • 立ち上がりや歩き始めがつらそう
  • 腰回りの腫れや左右差

■ 診断と検査

触診や歩様観察に加え、X線(レントゲン)検査を行うことで、骨の位置関係を確認し、脱臼の種類(前方脱臼・後方脱臼など)や重症度を把握します。


■ 治療について

股関節脱臼の治療は、脱臼の程度や発症からの時間、体格や年齢に応じて変わります。

  1. 整復(骨を元の位置に戻す処置)
    • 鎮静または麻酔下で行います。
    • 整復後は、バンデージやスリングなどで数週間固定することがあります。
  2. 外科的治療
    • 整復が難しい場合や再脱臼しやすい場合は、**手術(大腿骨頭切除術や股関節再建術)**を行うことがあります。
    • 特に先天的な股関節形成不全がある犬では、根本的な治療として手術を選択することもあります。

症例紹介

症例は7ヶ月のトイ・プードルで後肢の跛行を主訴に来院しました。
股関節脱臼が起きており、股関節自体の構造には問題がなかったため骨頭切除ではなく骨頭靭帯再建による脱臼の整復手術を行いました。

画像は術前の脱臼しているレントゲン画像と手術後の脱臼を整復した画像です。
治療後はリハビリをして歩けるようになっていきました。
股関節脱臼に対する手術は主に骨頭切除と骨頭靭帯再建術がありますが、関節の構造に問題がない場合は骨頭靭帯再建術をしてあげることで短期間での歩行が可能になるケースが多いです。

足の跛行があり、脱臼の可能性がある場合は早めに来院ください。