犬の腹腔内陰睾について
「陰睾(いんこう)」または「停留精巣(ていりゅうせいそう)」とも呼ばれるもので、本来、精巣(睾丸)は出生後に陰嚢(いんのう:おしりの下にある袋)に降りてくるのが正常です。しかし、この状態では片側または両側の精巣が陰嚢に降りず、お腹の中(腹腔内)や鼠径部(足の付け根付近)に留まってしまっています。
腹腔内陰睾のリスクについて
腹腔内に精巣がある状態を放置すると、以下のような問題が生じる可能性があります:
- 精巣腫瘍(がん)になりやすい
- 精巣捻転(ねじれ)による急性の痛みや緊急手術のリスク
- 精子が正常に作れず、不妊の原因になる
- 性ホルモンの影響で攻撃性が増すことがある
特に腹腔内にある精巣は、体温の影響で腫瘍化のリスクが高くなることが知られています。
治療について
唯一の根本的な治療は、手術によって腹腔内にある精巣を摘出すること(去勢手術)です。
通常の去勢手術に比べてやや複雑な手術にはなりますが、開腹手術によって安全に取り除くことができます。手術後は順調に回復し、健康的な生活を送ることができます。
症例紹介
症例は6ヶ月の犬です。去勢手術をご希望されましたが、陰嚢内には睾丸がなく、腹腔内に精巣があったため腹腔内陰睾の手術を行いました。
膀胱の隣りにあるのが未発達の精巣です。腹腔内に精巣が残っている状態だといずれ癌化する可能性が高いので、摘出を行います。腹腔内陰睾の手術をご希望の場合はご相談ください。
