猫の乳腺癌について
猫の乳腺癌(にゅうせんがん)は、乳腺にできる悪性の腫瘍(しゅよう)です。特に避妊手術をしていないメス猫に多く見られます。乳腺にしこりや腫れが見られることが主な症状で、進行すると肺などの他の臓器に転移する可能性があります。
【特徴】
- 猫の乳腺腫瘍の**80〜90%が悪性(癌)**であると言われています。
- 早期発見・早期治療が非常に重要です。
- 高齢のメス猫(7歳以上)によく見られますが、若い猫やオス猫でもまれに発症します。
【原因】
- ホルモン(特にエストロゲン)の影響が関係していると考えられています。
- 避妊手術をしていない場合、発症リスクが高まります。
- 6ヶ月齢までに避妊手術を行うと、乳腺癌のリスクを90%以上減らすことができます。
【症状】
- 乳腺(お腹側の乳首の周囲)にしこりや腫れが見られる
- しこりが硬く、触ると動きにくい
- 時に出血や膿(うみ)を伴うこともあります
- 食欲不振、元気消失、体重減少など、進行した場合に見られます
【診断】
- 視診・触診でしこりを確認した後、**細胞診(針で細胞をとって検査)や病理検査(手術で摘出後の組織検査)**を行います。
- レントゲンやエコー検査で転移の有無を確認することも重要です。
【治療】
- **外科的切除(手術)**が第一選択です。早期の小さなしこりであれば、摘出だけで治療可能な場合もあります。
- 通常は、腫瘍ができている側の乳腺を**全体的に切除(片側乳腺全切除)**することが多いです。
- 状況に応じて、抗がん剤治療を併用する場合もあります。
【予後(よご)・経過】
- 腫瘍の大きさ、リンパ節や肺などへの転移の有無で予後が大きく変わります。
- 2cm未満の小さな腫瘍であれば、手術後の生存期間が3年以上になることもあります。
- 一方で、大きな腫瘍や転移がある場合は、再発や進行のリスクが高く、平均生存期間は1年未満となることもあります。
症例紹介

15歳のメス猫で多発性乳腺癌を発症した子です。左右の乳腺に腫瘍があり2回に分けて両側の乳腺を摘出しました。高齢ということもあり麻酔は局所麻酔などマルチモーダル麻酔を用いて安全に麻酔をかけられるようにしました。

無事に傷もきれいになって来て、治療終了です。
悪性腫瘍が多発していた症例なので、今後再発がないかどうかはチェックしていく必要がありますが、病理検査の結果では完全切除が出来ているとのことで一旦完治という判断になりました。