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猫の消化器型リンパ腫について
猫の消化器型リンパ腫(しょうかきがたりんぱしゅ)は、リンパ球という免疫を担う細胞が腫瘍化して、消化管(胃や腸など)に発生する悪性腫瘍です。猫では比較的よく見られるリンパ腫のタイプです。
【症状】
腫瘍ができる部位によってさまざまですが、よく見られる症状は次の通りです。
- 食欲不振・体重減少
- 嘔吐や下痢
- 元気がない
- 便に血が混じる、または黒っぽい便が出る(消化管出血)
- お腹のしこり
これらの症状は、ほかの病気(炎症や感染症)でも見られるため、診断には検査が必要です。
【診断】
診断には、
- 血液検査
- エコー検査(超音波検査)
- 内視鏡検査や外科的生検による組織検査(確定診断)
などを組み合わせて行います。
腫瘍の種類や広がりを調べることで、治療方針を決めます。
【治療】
主な治療法は**抗がん剤(化学療法)**です。
- 低悪性度(小細胞型)の場合:内服薬(プレドニゾロンやクロラムブシル)で長期的に管理できることもあります。
- 高悪性度(大細胞型)の場合:点滴での抗がん剤治療が必要になり、通院治療が中心となります。
症例紹介
症例は10歳の猫で慢性的な嘔吐、下痢、食欲不振を主訴に来院されました。超音波検査では消化管の腫れ(筋層の肥厚)が認められ、リンパ球形質細胞性腸炎などの炎症疾患とリンパ腫などの腫瘍性疾患について鑑別が必要と考えられました。
内視鏡での検査を行うことになり、内視鏡生検の結果、悪性の大細胞性リンパ腫と診断されました。消化管全体が腫れているタイプであったため、病変部位の外科切除は行うことはできずに抗癌剤治療に入りました。
治療に用いた抗癌剤プロトコールはUWー25(CHOP療法)を基本としましたが、この症例ではエンドキサン(シクロホスファミド)の効きがとても良く、副作用も殆ど出なかったため、エンドキサン(シクロホスファミド)の高用量投与を基本としたプロトコールを使用しました。
この症例はリンパ腫の完全奏効に至り、抗がん剤を使用せず経過を見ていっております。
リンパ腫と診断された、リンパ腫の疑いがある、積極的な検査治療をご希望される場合など、なにかご不明な点があれば一度ご相談ください。