猫の消化器型リンパ腫について
消化器型リンパ腫とは、猫の胃や腸など消化管に発生する悪性腫瘍(がん)の一種です。特に中高齢〜高齢の猫に多く見られ、猫のがんの中でも比較的よく見られる病気のひとつです。
【リンパ腫とは?】
リンパ腫は、「リンパ球」と呼ばれる免疫細胞ががん化し、異常に増殖する病気です。猫ではさまざまな臓器に発生する可能性がありますが、「消化器型」は腸や胃などの消化管にできるタイプを指します。
【主な症状】
消化管に腫瘍ができることで、以下のような症状が見られることがあります:
- 長引く下痢や嘔吐
- 食欲の低下またはまったく食べない
- 体重の減少
- 元気がなくなる
- お腹を触ると痛がる、しこりのようなものを感じることも
症状は比較的ゆっくり進行する場合もあれば、急速に悪化することもあります。
【診断のために行う検査】
正確な診断のためには、以下の検査が必要になることがあります:
- 血液検査(全身状態の確認)
- 超音波検査・レントゲン検査(腫瘤の有無や消化管の状態を確認)
- 内視鏡検査または開腹手術での生検(病理検査による確定診断)
- リンパ腫のタイプ判定(T細胞性 or B細胞性)
→ 予後や治療法選択に関わる重要な情報です
【治療法】
消化器型リンパ腫の主な治療法は**化学療法(抗がん剤治療)**です。
- 低グレード(ゆっくり進行するタイプ)
→ 抗がん剤(クロラムブシル+プレドニゾロン)で比較的良好な反応が期待できます
→ 月単位〜年単位での延命が可能なケースもあります - 高グレード(進行が早いタイプ)
→ より積極的な抗がん剤治療が必要。反応があれば症状の改善や延命が可能 外科手術を行って腫瘍細胞を減らしてから抗がん剤治療に入るとより生存期間が伸びるという報告があります。
→ ただし、副作用の管理が必要になります - 対症療法(内科的ケア)
→ 抗がん剤が難しい場合には、痛みや吐き気、食欲不振へのケアを行います
【予後(病気の見通し)】
- リンパ腫のタイプ、治療開始のタイミング、猫の全身状態によって大きく異なります
- 低グレードでは1年以上の生存例もありますが、高グレードでは数か月程度のこともあります
- 治療により生活の質を保ち、穏やかに過ごす時間を延ばすことが可能です 抗がん剤治療により寛解にできることもよくあります。諦めずに治療をすることをおすすめいたします。
症例紹介
症例は14歳の猫で頻繁に嘔吐をするとのことで来院されました。超音波検査にて小腸に腫瘍が見つかったため、院内で細胞診検査を行いました。検査当日に病理診断医からの仮診断が届き、翌日に手術を行うことになりました。
小腸には大型の腫瘍が見つかったため摘出し、小腸同士をつなぐ手術を行いました。
術後は2日でご飯を開始しました。食欲も問題なく無事に退院しております。
がんが疑われる場合は早めに来院ください。