猫の肥大型心筋症について
肥大型心筋症(HCM:Hypertrophic Cardiomyopathy)は、猫にもっとも多くみられる心臓の病気です。
心臓の筋肉(特に左心室)が分厚く硬くなることで、心臓が正常に働かなくなり、さまざまな症状が出てきます。
■ どんな病気?
心臓は全身に血液を送るポンプの役割をしていますが、肥大型心筋症では左心室の壁が異常に厚くなり、その結果:
- 心臓の中に血液がたまりにくくなる
- 拍出(送り出す)量が減る
- 心臓に負担がかかる
- 血液の流れが悪くなり**血栓(血のかたまり)**ができやすくなる
といった問題が起きます。
■ 原因は?
はっきりとした原因がわからないことも多いですが、一部の猫では遺伝的要因(特にメインクーン、ラグドール、アメリカンショートヘアなどの品種)が関係しています。
また、甲状腺機能亢進症や高血圧などの病気が引き金になる場合もあります。
■ 主な症状
肥大型心筋症は初期には症状がまったく出ないことが多いです。
しかし、進行してくると以下のような症状が見られることがあります:
- 呼吸が早くなる、苦しそうにする
- 元気や食欲がなくなる
- 後ろ足が突然動かなくなる(血栓による麻痺)
- 急死することもある(特に無症状のまま)
■ 診断方法
- 聴診(雑音や異常なリズムの確認)
- 心エコー検査(心筋の厚さや心臓の動きを評価)
- レントゲン検査(心臓や肺の状態)
- 血液検査(心臓の負担を示すBNPや甲状腺ホルモンなど)
- 必要に応じて血圧測定や心電図
■ 治療について
肥大型心筋症は完治が難しい病気ですが、薬によって症状を抑えたり進行を遅らせることは可能です。
治療には以下のようなお薬を使うことがあります:
- 心臓の負担を軽くする薬(β遮断薬、カルシウム拮抗薬など)
- 血栓を予防する薬(抗血小板薬)
- 利尿剤(肺に水がたまっている場合)
状態によって薬を組み合わせ、定期的な検査で経過を見ながら調整します。
■ 予後(病気の経過)
この病気は進行のスピードや症状の出方が猫によって大きく異なります。
中には数年にわたり症状なく過ごせる猫もいれば、急に症状が悪化するケースもあります。
定期的な心臓の検査がとても重要です。