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 犬の副腎腫瘍について

副腎は腎臓の近くにある小さな臓器で、体に必要なホルモンを分泌しています。
この副腎に腫瘍ができる病気を「副腎腫瘍」と呼びます。

副腎腫瘍には、ホルモンを過剰に分泌するタイプと、ホルモンをほとんど出さないタイプがあります。
特にホルモンを多く分泌する場合には、全身にさまざまな症状が現れます。


よく見られる症状

  • 水をたくさん飲む・尿量が増える
  • お腹が張る
  • 毛が薄くなる、左右対称の脱毛
  • 筋力低下
  • 呼吸が荒い
  • 元気低下
  • 食欲の変化
  • 高血圧
  • 糖尿病を併発することもあります

腫瘍が大きくなると、周囲の血管に入り込むこともあり、特に後大静脈へ浸潤するケースでは重症化することがあります。


診断のために行う検査

副腎腫瘍では、「本当に腫瘍なのか」「ホルモンを出しているか」「転移や血管浸潤がないか」を確認することが重要です。

血液検査

  • 肝酵素上昇
  • 血糖値異常
  • 電解質異常
  • 炎症反応

などを確認します。


ホルモン検査

副腎から出るホルモンの異常を調べます。

代表的な検査

  • ACTH刺激試験
  • 低用量デキサメタゾン抑制試験
  • 尿コルチゾール検査
  • カテコラミン関連検査(褐色細胞腫が疑われる場合)

画像検査

超音波検査

  • 副腎の大きさ
  • 腫瘍の形
  • 血管への浸潤

を確認します。


CT検査

副腎腫瘍では非常に重要な検査です。

  • 腫瘍の位置
  • 大きさ
  • 周囲血管との関係
  • 後大静脈への浸潤
  • 転移の有無

などを詳しく確認できます。

特に手術を検討する場合には、CT検査が強く推奨されます。


治療について

治療は、

  • 腫瘍の種類
  • ホルモン分泌の有無
  • 転移の有無
  • 血管浸潤の程度
  • 年齢や全身状態

によって決定します。


内科治療

ホルモン過剰がある場合には、薬でホルモンを抑える治療を行うことがあります。

代表例

  • トリロスタン
  • 降圧剤
  • 糖尿病治療

ただし、内科治療だけでは腫瘍自体がなくなるわけではなく、根本治療にならないケースもあります。


外科治療(副腎摘出術)

転移がなく、手術可能と判断された場合には、副腎摘出術を行うことがあります。

副腎腫瘍は、摘出によって根治が期待できる場合もある一方で、難易度の高い手術です。


手術の難しさ

副腎は非常に重要な血管の近くに存在しています。

特に問題となるのが、

  • 後大静脈
  • 腎静脈
  • 大動脈

との関係です。

腫瘍が血管へ入り込んでいる場合には、手術リスクが大きく上昇します。


手術のリスク

副腎摘出術では、以下のようなリスクがあります。

  • 大量出血
  • 血圧の急激な変動
  • 不整脈
  • 血栓形成
  • 術後の低血圧
  • 急性副腎不全
  • 膵炎
  • 感染
  • 術中・術後死亡

特に褐色細胞腫では、手術中に急激な血圧変動を起こすことがあります。


術後管理について

術後は集中管理が必要になることがあります。

  • 点滴管理
  • 血圧管理
  • 電解質管理
  • ステロイド補充
  • 酸素管理

などを行いながら慎重に経過をみます。

数日間の入院が必要になることが一般的です。


予後について

予後は、

  • 腫瘍の種類
  • 転移の有無
  • 血管浸潤
  • 手術の可否

によって大きく異なります。

完全摘出できた場合には長期生存が期待できることもありますが、悪性度が高い場合や転移がある場合には慎重な経過観察が必要です。

 症例紹介

症例は13歳の犬で、多食、多飲多尿、腹囲膨満、皮膚症状を主訴に来院しました。血液検査にて副腎の異常が疑われ、超音波にて副腎に腫瘍が見つかりCT検査を行いました。

左の副腎に腫瘍があり、完全摘出できる可能性が高いとの診断だったため摘出手術を行いました。

開腹をして腫瘍までアプローチをしたところです。

摘出した腫瘍です。

この症例は術後も元気で、ホルモンの変化による体調不良が出ないように薬を使いながら、数日で退院しました。現在術後半年以上経過していますが、再発等無く、元気に過ごしています。

クッシング症候群、副腎腫瘍などがある場合は早めにご相談ください。