症例カテゴリー
猫の歯肉炎について
猫の歯肉炎は、歯の周囲に炎症が起こり、歯肉が赤く腫れたり、出血したりする病気です。進行すると口の痛みが強くなり、食べにくい、食欲が低下する、口臭が強くなる、よだれが増えるなどの症状がみられることがあります。
猫では、歯垢や歯石による一般的な歯肉炎だけでなく、**猫の慢性歯肉口内炎(FCGS)**のように、免疫反応が関与して強い炎症を起こす病気もあります。
内科療法
軽度の歯肉炎や、歯科処置をすぐに行うことが難しい場合には、抗菌薬や消炎鎮痛薬などの投薬によって炎症や痛みを抑える治療を行います。
特に口の痛みが強い場合には、痛みを抑えることで食事がとりやすくなり、生活の質を改善できることがあります。
ただし、**投薬だけでは歯石や歯周病の原因そのものを取り除くことはできません。**そのため、状態が許せば歯科処置を行うことが根本的な治療につながります。
歯科治療
歯石や歯周病が認められる場合には、通常は全身麻酔下で歯科処置を行います。
歯石を除去するだけでなく、歯周ポケットの清掃や歯の研磨を行い、必要に応じて重度に傷んだ歯を抜歯します。
猫の慢性歯肉口内炎では、通常の歯石除去だけでは十分な改善が得られないことがあり、炎症の原因となっている歯を抜歯することで症状の改善を目指します。
高齢猫や麻酔のリスクが高い場合
高齢であったり、心臓病・腎臓病などの基礎疾患がある場合には、全身麻酔のリスクを考慮する必要があります。
その場合でも、「全身麻酔が難しいから何もできない」というわけではありません。
猫の年齢や全身状態、口の中の炎症の程度、食事ができているかなどを総合的に判断し、以下のような方法を選択することがあります。
- 全身麻酔ではなく、鎮静下で可能な範囲の歯科処置を行う
- 歯科処置を行わず、内服薬によって炎症や痛みをコントロールする
- 内服薬を飲ませることが難しい場合には、注射薬などを利用して症状を管理する
- 状態が落ち着いた段階で、改めて歯科処置の実施について検討する
ただし、鎮静は全身麻酔より負担が少ない場合がある一方、**高齢猫や基礎疾患のある猫では鎮静にもリスクがあります。**また、鎮静では十分な口腔内検査や抜歯などができない場合もあるため、実施可能な処置は猫の状態によって異なります。
また、注射による治療は、投薬が難しい猫にとって選択肢となりますが、**注射だけで歯石や傷んだ歯を取り除くことはできません。**あくまで炎症や痛みを抑え、できるだけ快適に生活できる状態を維持するための治療です。
その猫に合わせた治療を選択します
猫の歯肉炎では、すべての猫に同じ治療を行うわけではありません。
若く全身状態に問題がない猫では、麻酔下での詳しい口腔内検査や歯科処置を積極的に行うことができます。一方、高齢猫や基礎疾患がある猫では、麻酔のリスクと治療によって得られるメリットを比較しながら治療方法を決定します。
「歯科処置を行って原因を取り除く治療」から、「投薬や注射によって痛みや炎症を抑え、できるだけ快適に過ごしてもらう治療」まで、猫の状態に応じて治療の強さを調整することが大切です。
また、口の中に強い炎症や痛みがある場合は、無理に歯磨きをすると痛みやストレスを増やしてしまうことがあります。まず炎症や痛みをコントロールしたうえで、可能な範囲で自宅でのデンタルケアを行うことをおすすめします。
口臭、よだれ、歯肉からの出血、食べにくそうな様子、食欲低下などがみられる場合には、早めに口腔内の状態を確認することをおすすめします。
症例紹介

症例は痛みで食べることが難しくなった猫で、口の中には腫瘍のような構造がボコボコとできておりました。歯肉炎も重度にありました。ボコボコしたものを採取して病理検査に出したところ炎症病変とのことで、腫瘍は否定されました。
歯科治療と、消炎剤などの注射でコントロールしております。
口臭、よだれ、歯肉からの出血、食べにくそうな様子、食欲低下などがみられる場合には、早めに口腔内の状態を確認することをおすすめします。
