症例カテゴリー
猫の肛門腫瘍、人工肛門(ストーマ)について
肛門腫瘍とは
肛門腫瘍とは、肛門やその周囲にできる腫瘍のことを指します。
良性の場合もありますが、猫では悪性腫瘍であることも少なくありません。
腫瘍が大きくなると、
- 排便がしづらくなる
- 出血や痛みが出る
- 便が細くなる、出なくなる
といった症状が見られるようになります。
なぜ治療が必要なのか
肛門は便が通る大切な場所のため、腫瘍を放置すると、
- 排便ができなくなる
- 強い痛みや出血が続く
- 感染や炎症を起こす
- 腫瘍が周囲や体の他の場所に広がる
といった問題が起こる可能性があります。
そのため、外科的に腫瘍を取り除く治療が必要になることがあります。
手術の選択肢について
① 腫瘍のみの切除が可能な場合
腫瘍が小さく、肛門の機能を温存できる位置にある場合は、
腫瘍部分のみを切除する手術で対応できることがあります。
ただし、腫瘍の広がり方によっては十分な切除ができない場合もあります。
② 肛門全摘出が必要な場合
腫瘍が肛門の周囲や筋肉まで広がっている場合、
肛門を残したままでは腫瘍を取り切れないことがあります。
その場合、
肛門をすべて切除(肛門全摘出)する手術が必要になることがあります。
③ 人工肛門(ストーマ)について
肛門をすべて切除した場合、自然に肛門から排便することができなくなるため、
お腹の横に**人工肛門(ストーマ)**を作り、そこから便を出す形になります。
人工肛門とは
- 腸をお腹の皮膚に開口させたもの
- 便はその開口部から直接外に出ます
- 人では装具を使いますが、動物では皮膚管理が重要になります
人工肛門での生活について
日常生活はできる?
多くの猫は、手術後しばらくすると普段通りの生活に戻ることが可能です。
- 食事:通常通り可能
- 動き:回復後は制限なし
- 排便:人工肛門から自然に排出されます
ただし、皮膚のケアや定期的なチェックが必要になります。
考えられる合併症・注意点
- 皮膚のただれ・炎症
- 便が皮膚に付着することによるトラブル
- 一時的な食欲低下や体力低下
これらは適切なケアと通院管理で対応可能なことが多いです。
予後(今後の見通し)について
- 腫瘍をしっかり取り切れた場合、生活の質を保ちながら過ごせる可能性があります
- 腫瘍の種類によっては、再発や転移のリスクがあるため、定期的な検査が必要です
- 痛みや排便困難から解放されることで、猫自身の生活の質が大きく改善することもあります
症例紹介
症例は15歳の猫で、かかりつけにて治療が難しいとのことで来院されました。腫瘍は肛門全周に広がり、結腸の一部まで浸潤していました。肛門の腫瘍が大きいため排便は困難な状態でした。
術前の状態です。肛門のように見える部分は肛門ではなく腫瘍の自潰によってできたくぼみです。
肛門を皮膚から切り離し、その奥の大腸(結腸)を引き出します。
引き出した腸と皮膚を縫合します。
肛門を全摘出する必要があったため、人工肛門になりましたが、今回はもとの肛門の場所に人工肛門を作ることができたため、自然に近い形に仕上げることができました。
術後はご飯も食べられるようになり、元気な状態になりました。

