猫の肝臓腫瘍について

猫の肝臓腫瘍について

猫の肝臓に腫瘤(しこり)が見つかった場合、肝臓腫瘍の可能性があります。肝臓腫瘍には、肝臓そのものから発生する「原発性肝腫瘍」と、他の臓器に発生した腫瘍が肝臓に転移する「転移性肝腫瘍」があります。また、良性の腫瘍と悪性の腫瘍があり、画像検査だけではその種類や良悪性を確定できないことがあります。

どのような症状が見られますか?

肝臓腫瘍では、以下のような症状が見られることがあります。

  • 食欲の低下
  • 元気がない
  • 体重減少
  • 嘔吐
  • お腹が膨らむ
  • 黄疸(歯茎や白目、皮膚が黄色くなる)

一方で、腫瘍が大きくなるまで症状がほとんど見られない場合もあります。血液検査で肝臓の数値の上昇が見つかり、超音波検査などで偶然発見されることもあります。

診断について

肝臓腫瘍が疑われる場合、血液検査、腹部超音波検査、必要に応じてCT検査などを行います。

CT検査では、腫瘍の大きさや発生部位、周囲の血管との位置関係、他の臓器への転移の有無などを確認します。手術を検討する場合には、腫瘍を安全に切除できるかを判断するためにも重要な検査です。

腫瘍の種類や良悪性を確定するためには、腫瘍の組織を採取して病理組織検査を行う必要があります。

治療について

肝臓腫瘍の治療は、腫瘍の種類、大きさ、発生部位、転移の有無、猫の全身状態などによって異なります。

肝臓の一部に発生した腫瘍で、外科的に切除できる場合には、肝葉切除による治療を検討します。良性腫瘍では、完全に切除できれば治癒が期待できます。悪性腫瘍でも、腫瘍が肝臓に限局している場合には、手術によって長期的な病気のコントロールが期待できることがあります。

一方、腫瘍が肝臓全体に広がっている場合や、重要な血管などに広く浸潤している場合には、手術が難しいことがあります。その場合は、腫瘍の種類や状態に応じて、薬による治療や症状を和らげる治療を検討します。

今回の手術について

今回の猫ちゃんでは、肝臓の内側右葉に腫瘤が認められたため、全身麻酔下で肝臓の内側右葉切除を行いました。

肝臓は複数の肝葉から構成されており、腫瘍が一部の肝葉に限局している場合には、病変のある肝葉を切除することができます。

手術では、お腹を開けて肝臓の状態を確認し、腫瘍の位置や周囲の血管との関係を確認したうえで、内側右葉を切除します。切除した肝臓は病理組織検査に提出し、腫瘍の種類、良悪性、切除断端の状態などを確認します。

肝臓は血流が豊富な臓器であるため、手術では出血に十分注意する必要があります。また、腫瘍の位置によっては、周囲の血管や胆管などを適切に処理することが重要です。

術後の経過と注意点

肝臓の一部を切除した後は、出血、貧血、肝酵素の上昇、胆汁漏出などの合併症に注意して管理します。

術後は血液検査などで全身状態や肝臓の機能を確認し、食欲や元気の回復を見ながら退院の時期を判断します。

退院後は、食欲が戻らない、元気がない、嘔吐する、お腹が張る、歯茎が白い、黄疸が見られるなどの症状があれば、早めにご連絡ください。

病理検査と今後の治療

肝臓腫瘍は、腫瘍の種類によって再発や転移のしやすさ、治療方針が異なります。そのため、手術後の病理組織検査が重要です。

病理検査の結果に応じて、追加の治療が必要かどうか、今後どのような検査を行うかを検討します。悪性腫瘍の場合には、定期的な血液検査や腹部超音波検査などで、再発や転移の有無を確認することがあります。

肝臓腫瘍は、腫瘍の種類や進行度によって予後が大きく異なります。今回のように、腫瘍が限局していて切除できる場合には、手術による治療が選択肢となりますが、最終的な見通しは病理検査の結果や術後の経過を踏まえて判断します。

 症例紹介

症例は12歳の猫で、超音波検査にて、肝臓の内側右葉に腫瘤が認められました。
事前に画像センターでCT検査を行い、手術を行うことになりました。

画像センターでのCT画像です。大型の腫瘍がみられます。一番の大型のものが腫瘍で、それ以外は肝嚢胞の診断でした。

手術では、お腹を開けて肝臓の状態を確認し、腫瘍の位置や周囲の血管との関係を確認したうえで、内側右葉を切除します。切除した肝臓は病理組織検査に提出し、腫瘍の種類、良悪性、切除断端の状態などを確認します。

肝臓は血流が豊富な臓器であるため、手術では出血に十分注意する必要があります。また、腫瘍の位置によっては、周囲の血管や胆管などを適切に処理することが重要です。

開腹して腫瘍を探していきます。

内側右葉に腫瘍が見つかりました。

今回は内側右葉なので胆嚢から剥がす必要があります。

閉腹して終了です。今回は正中切開だけでなく、右横切開も加えています。

症例は術後3日で退院しました。

退院後も体調は安定しており、現在も再発はみられておりません。