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猫の消化器型リンパ腫について
猫のリンパ腫は、猫で最も多くみられる悪性腫瘍(がん)の一つです。その中でも消化器型リンパ腫は発生頻度が高く、食欲不振や嘔吐、下痢、体重減少などの症状で受診されることが少なくありません。
「抗がん剤は副作用が強いのでは?」
「猫に化学療法を受けさせても苦しいだけでは?」
と不安に感じる飼い主様も多くいらっしゃいます。
しかし、現在の猫の化学療法は、人の治療とは考え方が異なり、生活の質(QOL)をできるだけ維持しながら病気をコントロールすることを大切にしています。
ここでは、猫の消化器型リンパ腫の治療や抗がん剤について分かりやすくご説明します。
猫の消化器型リンパ腫とは?
リンパ腫とは、リンパ球という免疫細胞が腫瘍化する病気です。
猫では胃や小腸、大腸などの消化管に発生する消化器型リンパ腫が多くみられます。
初期には症状が目立たないこともありますが、病気が進行すると次のような症状が現れることがあります。
- 食欲がない
- 嘔吐を繰り返す
- 下痢が続く
- 体重が減ってきた
- 元気がない
- 毛づやが悪くなった
これらの症状は慢性腸症(IBD)など他の病気でもみられるため、超音波検査や内視鏡検査、生検などを行って診断することがあります。
猫のリンパ腫は化学療法が第一選択です
リンパ腫は全身性の病気であり、手術だけで完治できる病気ではありません。
そのため、多くの場合は抗がん剤による化学療法が治療の中心になります。
化学療法の目的は、
- 腫瘍を小さくする
- 食欲や体重を回復させる
- 嘔吐や下痢などの症状を改善する
- 猫が普段通りの生活を送れる時間を長くする
ことです。
治療に反応した猫では、食欲が戻り、体重が増え、以前と変わらない生活を送れるようになることも少なくありません。
消化器型リンパ腫には2つのタイプがあります
低悪性度リンパ腫
進行が比較的ゆっくりなタイプです。
主にプレドニゾロン(ステロイド)とクロラムブシルによる内服治療を行います。
ご自宅で治療を続けられるため猫への負担が少なく、多くの症例で良好に病気をコントロールできます。
1年以上、場合によっては2~3年以上元気に過ごせる猫も珍しくありません。
高悪性度リンパ腫
進行が速く、短期間で症状が悪化することがあります。
この場合は、複数の抗がん剤を組み合わせるCHOPプロトコールなどの化学療法を行います。
定期的な通院や血液検査が必要になりますが、治療によって症状が改善し、寛解(検査上ほとんど病気が認められない状態)を目指すことができます。
猫の抗がん剤治療の副作用は?
「抗がん剤=つらい治療」というイメージをお持ちの方も多いと思います。
しかし、猫の抗がん剤治療では、人のように「副作用が強くても治療を優先する」という考え方ではありません。
当院では、猫が普段の生活を送れることを最優先に考え、副作用が強く出ないよう投与量を調整しています。
副作用として、
- 食欲低下
- 嘔吐
- 下痢
- 元気がなくなる
- 白血球が減少し感染しやすくなる
などがみられることがありますが、多くは一時的であり、必要に応じてお薬の調整や点滴などの支持療法を行います。
また、猫では人のように全身の毛が抜けることはほとんどありません。
治療中に行う検査
安全に化学療法を続けるため、定期的に検査を行います。
- 身体検査
- 血液検査
- 超音波検査
- レントゲン検査(必要に応じて)
これらの検査によって副作用の有無や治療効果を確認し、その時々の状態に合わせて治療内容を調整します。
猫の消化器型リンパ腫の予後
予後はリンパ腫の種類によって異なります。
低悪性度リンパ腫では、化学療法によって長期間良好な生活を送れる猫が多く、1~3年以上生存することも珍しくありません。
高悪性度リンパ腫では、治療に反応した場合でも中央値で約6~12か月程度と報告されていますが、病気の広がりや治療への反応によって大きく異なります。
大切なのは、数字だけではなく、その期間をどれだけ快適に過ごせるかということです。
当院の猫のリンパ腫治療
当院では、猫のリンパ腫に対して一律の治療を行うのではなく、
- リンパ腫の種類
- 病気の進行度
- 年齢
- 基礎疾患
- ご家族のご希望
を総合的に考慮し、一頭一頭に合わせた治療計画をご提案しています。
「できるだけ長く元気に暮らしてほしい」
その想いを大切にしながら、猫とご家族の負担をできるだけ少なくした化学療法を心がけています。
食欲不振や体重減少、慢性的な嘔吐・下痢が続く場合は、消化器型リンパ腫が隠れていることもあります。気になる症状がありましたら、お早めにご相談ください。
症例紹介

症例は14歳の猫で嘔吐を繰り返すとの症状で来院しました。
画像は超音波検査で小腸が腫れているところです。
検査の結果リンパ腫の診断がついたため、抗がん剤治療を開始しました。

状態に合わせて抗癌剤をアレンジし、数回の抗癌剤投与を行ったところ、寛解しました。
それから半年以上経過しておりますが、抗がん剤の投与もせず、再発は見られておりません。
